アーリーステージとは?向いている資金調達手段や成功例を紹介

アーリーステージとは?向いている資金調達手段や成功例を紹介

2022.09.05

スタートアップ企業の初期段階であるアーリーステージにおける資金調達は、今後の成長において避けて通れない重要な経営課題です。


そのため、起業家は、事業を軌道に乗せていくことと合わせて、資金調達に頭を悩ますこととなるでしょう。


本記事では、アーリーステージにおける資金調達のポイントについて分かりやすく解説していきます。



アーリーステージとは?

まずはじめに、アーリーステージの位置づけと、どのような目的を持って取り組んでいく必要があるのか紹介します。

アーリーステージとはどんなステージなのか

アーリーステージとは、スタートアップ企業にとって起業した直後の状態と位置づけられます。

アーリーの前、すなわち起業前の状態はシードとして、事業構想段階という位置づけです。

まだほとんど売上が立たない状態のため、売上による入金が見込めずに、事業資金が先立つタイミングとなります。

アーリーステージの目的

アーリーステージの目的は、なによりもPMF(Product Market Fit)に向かって事業を構築していくことにあります。

PMFとは、製品がマーケットに受け入れられる状態を指し、顧客の課題を解決できる適切な市場を見い出せている状態のことです。

その状態をアーリーステージの内に作っていかなければなりませんが、作るにあたっては優秀な人材の採用やマーケット調査費、さらには家賃など先行的に費用が掛かってきます。

アーリーステージの課題


アーリーステージにおける経営課題は多岐に渡りますが、その中でも特に重要な3つを紹介します。

資金繰り

売上が中々付いてこないアーリーステージにおいて、事業を延ばすために新たな投資が先行し、バーンレートが良化しない日々が続くこととなるでしょう。

そのため、資金繰りを日夜気にすることとなり、事業成長に集中できないことも起業家には出てきます。

そのため、中々事業が進捗しないという課題もあわせて出てくる、起業家にとっては非常に苦しい悩みです。

組織化

事業を成長させるには、起業家の力だけではなく、ほかのスタッフの力も重要になってきます。

そのため、組織化を行い、権限を移譲させながら事業を進めていくことが重要ですが、どうしても起業家に集中してしまい、分散できない悩みもでてくるでしょう。

グロースドライバー

アーリーの限りある経営資源であるお金を、どこに投下していくのが最も効果的であるかの判断が重要です。

投資が分散してしまうと、結果的に効果を生まない投資となってしまう可能性もあることも考えられます。

そのため、成長のためのKPIを設定し要素分解することで、成長のためのドライバーをいち早く探し当てなければなりません。

それぞれの課題について、出資先であるVCやエンジェルとの壁打ちを通じて、今後の成長戦略を考えていくことがアーリーステージの企業には欠かせないでしょう。

アーリーステージにおける資金調達手段

アーリーステージの一番の課題として挙げられる資金ですが、どのような調達手段が考えられるのか、具体的に見ていきましょう。

おもな資金調達として以下の4つがあります。

VCやCVCからの出資

まず、アーリーステージへの出資を強みとしているベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が挙げられるでしょう。

一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンターの調べによると、2022年1Qにおけるステージ別の投資実行件数として、アーリーステージが46.2%と半分近くを占めています。

VC、CVCにとっても注目しているフェーズであると位置づけているようです。


エンジェル投資家からの出資

シードでは難しかったエンジェル投資家も、PMFが形になってきているアーリーステージのタイミングでは可能性がでてきます。

事業計画にある程度の蓋然性があり、将来的なエグジットの目標が明確でバリュエーションが10倍以上の可能性があるなどを示す必要があるでしょう。

その場合にはある程度の可能性が出てくると考えられます。


信用保証協会保証付きの創業融資

創業前のシードから創業後5年未満のアーリーにあたる企業に対して、信用保証協会による100%保証が付く融資があります。

最大3,500万円までの資金調達が可能であることから、起業家にとっては必ず頭に入れておきたい手段の一つでしょう。

日本政策金融公庫の新創業融資制度

日本政策金融公庫の国民生活事業における新創業融資制度の活用です。

シード段階から事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象に、無担保・無保証人で利用可能となっています。

融資限度額は3,000万円までとなっており、資金使途としては設備資金ならびに運転資金にて使用可能です。

アーリーステージの資金調達を断られてしまう原因

投資家候補や金融機関との折衝を続けたものの、残念ながら断られてしまうケースもあります。

どのような原因によるものが多いのか、特に投資家から断られる事例について確認してみましょう。

トラクションが獲得できていない

トラクションとは事業を牽引するための推進力となるものであり、車の駆動力から来ています。

VCやエンジェル投資家は、ほかの出資先動向や市場環境を見てきているため、資金を投下して事業が推進するかの専門家です。

そのため、スタートアップの事業においてトラクションが獲得できているかどうかは指標や事業進捗を確認すればおおむね理解できるでしょう。

将来的な成長の兆しがないと判断した場合には、出資を断られてしまう可能性があります。

投資方針の違い

投資家は魅力的であり、僅かながらでも投資検討が可能であれば、スタートアップについては極力面談には応じてくれるでしょう。

しかしながら、経営者のピッチを聞いたり、デューデリを行う中で方針と違う場合は即断られてしまう可能性があります。

投資家としてもわずかでも可能性がないかどうか、起業家や事業に対してチェックをしているため、可能性がないと判断したら見切りも早く、ピッチの段階で明確にお断りされることもあるでしょう。

バリュエーションの乖離

客観的に外部の専門家が付けたバリュエーションであっても、投資家が出資するには高いと判断した場合、出資が断られてしまう可能性もあります。

魅力的なスタートアップであれば、投資家としてはバリュエーションが低い段階でより出資比率を上げて出資したいと考えるでしょう。

一方で自身のダイリューションを抑えたい起業家は、高い提示をすることも考えられます。

その折り合いが付かない場合は、見送りとなることもあるでしょう。

アーリーステージと前後の成長ステージの関係

続いて、アーリーステージの前後における各ステージとの関係を見ていきます。

シードステージ

シードとは、種を意味することから転じて、創業前の段階を段階を指します。

シードステージの経営状態や課題・目的

この段階では、事業を立ち上げる前のアイデアやコンセプトを考えている段階であり、プロダクトの準備段階であるといえます。

アイデアやコンセプトに対して研究開発や調査を重ね、課題解決に向けた形作りを行うことが目的です。

アーリーと同様に資金調達に加え、創業メンバー作りが大きな課題となるでしょう。


ミドルステージ

アーリーステージに引き続き投資が先行するものの、事業がさらに成長し売上がついてくる段階にあります。
さらに売上を伸ばすべく、組織やマーケティング強化が必要に必要になってくることから、資金調達としてシリーズBを行うことが多い段階です。

ミドルステージの経営状態や課題・目的

売上を拡大させていくための組織作りは引き続き必要であるため、セールスやマーケティング人材の強化を図っていく必要があります。

さらに、今後のエグジットを見据えて管理体制を強化していくべく、管理部門の設置も挙げられるでしょう。
さらなる成長に向けて、新製品・新サービスの立ち上げも必要になるかもしれません。

アーリーステージの資金調達成功例

アーリーステージの資金調達成功例として、シリーズAラウンドを中心に最近の調達事例を紹介します。

株式会社メディカルフォース

自由診療向け SaaS「medicalforce」を開発・運営する同社は、2022年8月にシリーズAラウンドで6億円を調達しています。

調達先はALL STAR SAASFUNDとANRIであり、2月に実施したプレシリーズAラウンドに続くものです。

株式会社Mined

子どもたちが自分のロールモデルとなるような先生から直接学べるプラットフォーム「スコラボ」を運営するスタートアップです。

2022年8月にプレシリーズAラウンドとして、ジェネシア・ベンチャーズから1億円を調達しています。

株式会社KiZUKAI

顧客体験管理を収益につなげる次世代型CXMツール「KiZUKAI」を提供するを運営するスタートアップです。

2022年6月にシリーズAラウンドとして、大和企業投資、STRIVE、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタルから総額4.35億円を調達しています。

アーリーステージへ投資を行っているファンド・VC

ジェネシアベンチャーズ

先ほどご紹介した株式会社Minedにも出資している同社は、シードラウンドとプレシリーズAラウンドを中心に投資を展開しています。

日本と東南アジアを拠点に事業を展開しており、2021年10月末に、大日本印刷や日本政策投資銀行などが出資した約80億円の2号ファンドを組成しました。

アジア全体のイノベーションを俯瞰しつつ、産業のDX化を推進するスタートアップ投資と経営支援に力を入れています。


SMBCベンチャーキャピタル

三井住友フィナンシャルグループ系列である同社は、2010年以降、投資累計800件超・約600億円の投資実績があります。

中でも2021年度末時点で、社数ベースでアーリーステージが53%を占めており、シード・アーリーステージに対する企業への積極投資を行っているようです。

ANRI

シードからレイターステージまでの幅広い投資を手掛ける同社は、2019年に立ち上げた4号ファンドで、1年半で53社に対し総額250億円の出資実績があります。

また、同ファンドでは、ダイバーシティやインクルージョンを推進する取り組みとして、女性起業家への出資比率が2021年3月時点で9.4%に達しているということです。

さらに起業家のリモートワーク環境に対応して、オンライン完結型の投資も開始し、アーリーステージ企業にとってもアプローチしやすい環境と言えるでしょう。

アーリーステージの成長を加速させるファンドの活用方法とは?

最後に、成長を加速させるファンドの活用方法について、とりわけ資金調達以外の側面についてご紹介します。

経営アドバイザー

VCやエンジェルは、投資家としての知見だけではなく、起業家としての経験も持ち合わせていることも多いでしょう。

そのため、起業家としては、事業を拡大するためのヒントを得るための壁打ち相手や、次のシリーズに向けての資金調達のため助言を得ることがもできます。

業務提携先や販売先の紹介


自社の経営資源だけでは成長が難しいこの段階において、業務提携や販売先を紹介してくれることは起業家にとっても非常にありがたいことです。

金融機関系のVCは数多くの事業提携先のパイプを持っているうえ、グループの銀行が抱える融資先企業を繋いでくれることもあるでしょう。

またLP出資している企業との繋がりもできるかもしれません。

スタートアップが自ら動くよりも、信頼ある投資家経由で紹介して貰った方が、製品・サービス内容に興味を持ってくれる可能性もより高くなります。

まとめ

アーリーステージのスタートアップにとって最も重要な資金調達についての課題を中心に紹介しました。

検証を繰り返しながら事業を確立するとともに、トラクションを獲得しながら成長していく必要があります。

そのためには新たな資金ニーズがあることを、投資家と迅速かつ丁寧に対話しながら進めていくことが重要であると言えるでしょう。

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画像出典元:O-DAN


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